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2019年06月04日

「そして滑落」無事に生還されたアウトドアショップ店主の生還記

福岡の実家の近くにあるアウトドアショップ『GRiPS』の店主の永松修さんが滑落事故にあった続きです。

先日のブログも合わせてご覧ください。

●行きつけのお店の店主が滑落事故
https://marketing.yoka-yoka.jp/e2070222.html


一命は取り留めたものの、重症で3ヶ月の長期入院。

55時間、水も飲むことが出来ずに、しかも奇跡的な生還をされて、
本当に良かったです。

永松修さんの1日でも早い回復を心から応援しております。

「そして滑落」無事に生還されたアウトドアショップ店主の生還記


下記、店主からのブログの引用です。

今後、同じような事故に合う方を一人でも減らすために、シェアさせていただきます。


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そして滑落
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「チキン南蛮かー、やっぱり地鶏かなー」

なんて考えながらルンルンで下り始めた。

もちろん体がルンルンしてるわけではなく、心だけ。

登りのことも事もあるし慎重に慎重に。

だって時間はたっぷりあるのですから。



これだけ多くの時間を山で過ごしていれば、ヒヤリ・ハっとした瞬間なんてもちろんある。

こうなればこう、いつでもどんな時でも先を読み、どんな場面でも対応できるシュミレーションも抜かりない。

僕はそういう人間であり、妄想好きでもある。


「ひぇ~、ここ落ちたら死ぬな」、

「うぉー、ここ危ねーな」、

そんな時はキンっと体に緊張感が入り、頭も体も切り替わる。


自信も過信も無かったはず、でも一瞬の油断があったのかもしれない。

そう、想像もしないような場所で事故は起こった。


普通にテープのある(とは行っても道という道は無い)場所をトラバースしてた瞬間、その場所全てが崩落。

こんな経験だってある。

体勢を地面側にストックや木で止まる、逆でも同じくピッケルで止まる動作。

これまで相当山を歩いてきたし、たくさんの経験をしてきた。


でも出来なかった。

運動能力、反射神経の衰えなのであろうか。

壁側に体を向けた瞬間、後ろでんぐり返りの状態に。




そしてドンッドンッ10回転

ドスッ、バキッ、20回転くらいしただろうか。

回転しながらも、「ヤバい、打ちどころ悪かったら死ぬ!」

腕で頭と胸、腹部をガードした。


何度も岩や木に激突しながら30mほどしたの崖の木に引っ掛かった。

「あー、ついにやってしまった」

頭や顎から血がポタポタと落ちてくる。

息が止まりそうだ。

天を仰ぎ、呼吸を整える・・


「うぉー、なんじゃこりゃー!!」

右足が明後日の方向を向いている、しかもぷらんぷらんになっている

電話しよう。

無い、ポケットに入れてた携帯が無い。

とりあえず携帯を探しに行こう。

動かない、足が。

しかもここは崖だ。


操り人形のようになっている右足。

太腿から90度真横を向いてる足をまっすぐに。

「バキバキバキッ」、もの凄い音がした。

ザックからウルトラライトテーブルを取り出し、太腿に当ててニューハレのテーピングでグルグル巻きにしてみた。

登ろうとするが、全くダメだ。

プラプラの足が邪魔で仕方ない。

足1本ってこんなにも重いのか。



体は木に引っ掛かってるだけだから少しでも移動しないとどうしようもない。

ストックとプラダンをあわせて細引きで固定した。

プランプランだけは少しは収まった。

右腕も痛くてあまり動かせない、左手と左足のみ?

絶対に無理だ、この状態でこの崖を登るのは。

とりあえずどこかで横になりたい。



ほんの少しの横移動ならば。

そのほんの2~3mを命がけで移動した。




そして方片手片足で少しだけ這い上がり、このような場所で体を横たえた。

ここで15分ほど呼吸を整え、携帯を........

無理だ。

体がピクリとも動かない。

時間は午後2時を回った位であろうか、わからない。




「生きる準備をしよう」

この場所でとりあえず48時間生きのびる準備をはじめた。

僕は毎回どんな低山であろうと家族に登山計画書を伝えてある。

計画書といってもそんなに詳細なものではなく、登山口-コース-宿泊予定ポイントなど。

今回の下山予定は明日の夕方、それまでに連絡が無い場合は家族が心配し、通報。


そうなると捜索が開始されるのは早くても2日後から。

だからどんなに早く見つけられても今から48時間後なのだ。

もうこれ以上無駄な体力は消耗しないように準備を始める。


幸いザックがOMMだったため、DUOマットを取り出し敷く。

ラッキーだ、エアピローも持っている。

化繊ダウンを着る、ツユハラヒを巻き付ける。

ウエストポーチを腹巻代わりに。

丁度良いところにあった木で足の高さ調整をし、一番痛みの少ない位置を探る。

足をまっすぐに整える。


*後日談だが救命の先生にかなり褒められた。
先「整復術とか学んでたの?」
私「いえ、何となくこうした方が良いかなと」
先「超ファインプレー!、これしてなく、これだけ時間が経過してれば足元通りになってないね」

言い忘れてたが、今回携帯とザックのサイドポケットに挿してあった最後の水分が紛失している。
そう、水が1滴もない!

すぐそこにとてもキレイな沢がある。

でも一歩も動けない。

兎に角水が飲みたい。

食料は十分にあるが、ジェル系の物はすでに消化し、残りはバー系の固形物、後はお湯が必要なもの。

いつも言ってたように僕は少々食べなくても何ともない。

だが死なないためにもすこし補給食をかじってみる。

だめだ、、唾液がまったくでない、口の中がカラッカラで飲み込めない。


そろそろ1日目の夜がやってくる。。

最低気温はどれくらいまで下がるだろう。

たぶん12~3℃かな。

体力は消耗、出血に発熱。

十分に低体温症の危険性がある。


キルトを体に巻き付ける、最後にエマージェンシーシートでくるむ。

損傷の激しい右足だけは出して冷やす。


痛い、猛烈に痛い、右足はソフトシェルパンツがハチ切れそうなほど張れ上がっている。


夜がやってきた。

寒い、
寒い、
寒い、

背中も全て寒い。

かなり発熱してるっぽい。

吐き気がする、苦しい、

息が止まりそうだ・・・・



2日目

一睡もできないまま夜が明けた。

良かった、死ななかった。

太陽の光を浴びると、息苦しさや吐き気も少し収まってきた。

今日も救助は来ないと決めている。

奇跡が起きない限り。

キセキとは他に登山者がやってくるということ。

年間何人の方がこの山に来るだろう?

何十人だったら今日来る可能性は何%、平日だったら0.何%かーなんて勝手な計算なんかして・・


物音がする度、「人かっ」と思いホイッスルを鳴らしてみる。

また時折叫んでもみる、一応。


そうしてる間にも午後になっただろうか。

と、言うことは今日も発見されないこと100%決定。

さて、「2日目の夜を生き抜く準備をする」。

少しでも食べてみよう。

ガムを持っていた。

ガムを噛んで唾液をだした、そしてほんの少しバーをかじる。

やっぱり駄目だ。

食べれない、喉が乾きすぎて狂いそうだ。




寝床をバージョンアップだ。

昨夜は寒かったから今日は更にタープを引っ張り出す。


タープをコの状に。

上半身しか動かないからキレイには張れない。

万が一雨が降ればヤバいな。


キルトを頭と足と木にロープで固定。

更にハンモックも体に巻き付ける。


2日目の夜を生きぬく準備は整った。



後は水分だ、脱水で死んでしまわないか、不安だ。

あー、コーラ飲みたい。


時間が長すぎる。

色んな事を考えた。

足は元通りになるのか?

仕事の段取り。

今の状況でも当分はお店開けれないのも明白だ。


こんな時でも頭の中で色んな段取りをしている。



2日目の夜を迎えた。

下山報告が無いことで、家族達はようやく心配が始まっただろう。

ただ今夜中に捜索願が出ないことは想定済みだ。

何故なら自由気ままに生きてる僕は、頻繁に朝帰りなんかする。

下山後に温泉に泊まって、朝直接会社に行って、お店を開ける、みたいな。

携帯無くした?壊れた?、嫁は色んな想像もしてるだろう。

だから家族は明日の朝までは捜索願は出さない。全てその通りだった。



これが猛烈に反省すべき点。

「下山予定日の何時までに連絡がとれなかったら、躊躇なく○○に電話する」

これを徹底しておかなければならなかった。

そんな決まりを作っておけば、例え僕が携帯を無くそうとも、公衆電話からでもかけるし。





さて、時刻は深夜を回っただろうか。

昨日よりは寒くない。

発熱はしてるようだが呼吸も落ち着いている。

防寒対策はバッチリでほんの少しだけ眠れた・・・






3日目の朝が来た。

今日は帰れると確信している.....

何時位に発見されるか想像してみた。

今日はお店の開店日、嫁は開店時間ギリギリの12時くらいまで待つだろう。

この山域だと佐伯か、、

午後捜索願が出て、作戦を練り・・部隊が動き出して頂くまでにどれくらいの時間を要するのだろうか?

自分がいるポイントは茂みに隠れており、ヘリだとすぐには見つけれないだろうし、

地上部隊は作戦の時間、佐伯市内から登山口まで1.5時間、自分のポイントまで1.5時間…



!?ヤバいな。

もしかすると本日中の救助も無理な可能性が出てきた。

そうなると滑落から72時間オーバーか。

大丈夫かな。。



今日発見されなかったら、ここから沢まで転がるか?

リスク高すぎるな。

もう一回携帯探しに挑戦してみるか?

駄目だ、起き上がることすら出来ない。



待つしかない。


そろそろ午後かな、ヘリの音を探す、足音も待つ、神経はビンビンに研ぎ澄まされている。


その時!

「ひ、人の声が聞こえる!!」

すかさずホイッスルを鳴らし続ける。


見えた!

?捜索隊ではない、一般の登山者だ、ご年配の男性方二人。

向こうも私に気づき、状況を説明し、救助要請、時刻は11:30。

とりあえず水分を頂いた。

ポカリ2本、1L、死ぬほどウマイ。

ここは電波が入らないから登山口まで戻って頂くことに。


ここで本日中の生還は確定した。

まだ生きれる。

戴いたおにぎりをチビチビゆっくりかじりながらポカリを飲む。

早くても3時間以上だな。

この場所ならば救助に難航するだろうから、最悪日没ギリだな。




目を閉じる・・・・

いつの間にか眠っていた。



遠くでヘリの音が聞こえる。

自分の場所は見えないだろうな。

ライトの準備をする。

茂みの隙間から照度MAXで点滅させる。

その一瞬に気づいていただいたようだ。


僕の真上にヘリがきた。

もの凄い風圧で、視界がパッと開けた。

「私の居場所はここです」

確認の照射を続けた。


間違いなく伝わっている。

ヘリはいなくなり待つこと20分くらいだろうか、稜線側から隊員2名到着。

「ありがとうござます」


地上部隊を待つ。

その間に私のスマートフォンも見つかる。

数十分後、地上部隊到着。

作戦会議だ。


こんな場面で不謹慎かもしれないが、この救助隊の方達の仕事っぷりが気になって仕方ない。

大勢の方が命を張って、一つの命を救う。

とても過酷で危険だ。

このような状況を知ってもらうことで抑止力に繋がらないだろうか。

こんな状況の私が言うことではないが。

写真や動画を撮りたかった。

でも流石にやめた。



隊員さん達の言葉ひとつひとつ、とても優しい。

たまらなく優しい。

言動、行動、全てがプロフェッショナルだ。


作戦は決まったようだ。

稜線まで引き上げてヘリピック。

日没予定は19時15分。


このようなプラスチックの下敷きのようなものでグルグル巻きに固定され引き上げる。

しかし、ここは崖、横移動、縦移動のルートを決める。

「痛かったら言って下さいねー!」

「痛くても我慢するので大丈夫です!!」

とは言ったものの、叫び声は出てしまう。

死ぬほど痛い。。



18:30位だろうか、稜線に出た。

「それでは今からヘリで引っ張りますねー」

滑落から55時間

遂にヘリピックだ。



持ちあがる瞬間、隊員さんの最後の言葉

「怪我が治ったら、また佐伯の山に来てくださいね!」



ずっと冷静だった僕も涙が溢れ出てきた。

涙が止まらない。

今この文章を打ってるとまた涙が出てくる。

どんな感情なのか。

良かった、嬉しい、ありがとう、すみません、全部違う気がする。

何なんだろうこの感情は。

また来れる、また行きたい。

よく解らない。

どんどん涙が溢れてくる。



人の為に命をかけて、そしてそんな言葉。

心を打たれた。


そして僕は病院へと。
骨折、全身打撲、出血、脱水、全治3カ月の大けが。

一命は取り留めた。


そして手術後、ベッドに横たわったままこの記録を書いた。





『山岳事故』

体力不足、道迷い、準備不足。

防げるものが多くでしょう。

捜索費、人件費、その他もろもろ、多額の税金がかかっている。



『登山計画書の提出』
今回私の猛烈な反省点です。
もっと詳細に家族と決めごとを作っておくべきでした。
1年中毎週山へ行ってることで、慢心があったのは間違いないです。
登山届提出箱の無い山なんていくらでもあります。
その場合は警察や役所などありますが、そんなに面倒に考えなくて良いです。
自分の計画を家族や知人に伝えておくことです。


『山岳保険について』
私はもちろん入ってました。
ピッケル等使用の冬山対応の年間会員です。


『捜索費について』
今回駆けつけて頂いたのは
消防、警察、そして防災ヘリです。
よって捜索費は発生してません。


今回の私の起こした事故、これは防げたのであろうか?

とても身体能力の高い人ならばこんな事にならないのか?

いや自然相手に100%大丈夫なんてことはあり得ない。

そうなんです、このブログをみて頂いている全ての方に起こりうることなのです。

いつものあの山に行く時も、
その裏山へ行く時も、

いつも、
ずっと忘れずに、
この事故を思い出して頂くだけで、
事故が1件でも防げれば幸いです。


とても長くなりましたが、私の九死に一生を得た貴重な体験談でした。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

●GRiPSブログより「そして滑落」
https://ameblo.jp/beecle/entry-12464710889.html

●アウトドアショップ【GRiPS -グリップス-】ホームページ
https://grips-outdoor.jp/


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